O'Henry Four Acesのハナシ

10-01,2017

ご無沙汰しております。

最近手物の資料にあるO'Henry Four Acesの作品をまとめて読みまして、メモがてら記事にして紹介してみようかと思い立った次第です。
手元に資料のある手順をまとめただけなので、このプロットを研究するにあたり目を通しておくべき作品をスルーしているかもしれません。
なお作品をリストアップした際は、「松田道弘のオリジナル・カードマジック」での参考文献のリストやDenis Behrのサイトを活用しました。

O’Henry Four Acesに関して少しだけ。
このブログをご覧いただいている方は、当然ご存知かと思いますが、4エースアセンブリのひとつのテーマです。
エースが1枚ずつリーダーパケットに移動した後、最後のエースが消えてリーダーパケットに移動すると思いきや、エースが消えると思われていた別のパケットに集まるというプロットです。
原案はRoger Smithが発表した”Slow Motion Ace Switch-a-roo”とされています。
O'Henry Four Acesの名で発表したのはパクリの達人Frank Garciaで(私の言葉ではない)、以後この呼び名が一般的になっています。
Darwin Ortizが発表したパリエーション”Hitchcock Aces”なども印象的なタイトルで、そちらを元にしてタイトルを付けた改案も結構見かけます。
このあたりは、松田道弘さんの「松田道弘のオリジナル・カードマジック」や、こちらのサイトで詳しく書かれているので私はこの辺りで控えておきます。



※Jazz AcesでO’Henryエンディングのある作品もありますが、別枠だと思ったので今回はJazz Acesのバリエーションは除外しました。

J.C. Wagner “The Assembly”
出典:The Commercial Magic of J.C. Wagner(1987)
表面上はさほど複雑さは感じないが、裏側ではいろいろなアイディアを詰め込んだ手順で読んでいて楽しい。
1段目のPeter Kaneのアイディアを使った見せ方が非常に巧妙。
Vernonのモンテムーブを使った2段目がやや強引ではないかと思う。ただエースアセンブリでこの技法を使用している例を知らないのでそういった意味では面白い。
手順とは関係ないが、解説が映画”スティング”っぽい。

Darwin Ortiz “Hitchcock Aces”
出典:Darwin Ortiz at the Card Table(1988)、
最後にリーダーパケットから4枚の絵札が出てくるエンディング。
ハンドリングも今見直しても完成度の高い手順だと思う。
小技の効いた1段目が個人的にお気に入り。

Larry Jennings “Red Rover Aces”
出典:The Cartwright(1988)
やや特殊なスイッチを使った良くも悪くもJenningsらしい実験作。
最初から最後までパケット同士が接触しすぎており、アセンブリ現象の解決方法としてあまり良くないように思う。
この手順で中心となる技法については面白い動きをする技法なので、何か有用な使い方がありそうではある。

Allan Ackerman “A Bag of O'Henry”
出典:Las Vegas Kardma(1994)
最後には全てのパケットが4 of a kindsのになる豪華なクライマックス。
リーダーパケットをスイッチする流れが巧妙。
途中までは各パケットがばらばらであることが何気なく示されてるのが上手いが、クライマックスはフォールスカウントを使わないで見せたい。
Ackerman自身の改案でロイアルフラッシュの出現を絡めたA Bag of O'Henrys - Re-bagged(「Al Cardpone」収録)という作品もあるようだが、未確認。

James Swain “Superbowl Aces”
出典:Miracles with Card(1996)
アメフトをテーマにした作品。演出に関してはルールを知らないのでのでよくわからない。
骨組みは原案ベースでバーノントランスファーの使い方と、ややフラリッシュっぽい扱いが特徴。
この手順と直接的には関係ないが、O'Henry AcesのプロットはMike Schwartzによる考案であり、最初に発表した人物がRoger Smithであるという一文が書かれている。

James Swain “Hitchcock Aces”
出典:Miracles with Card(1996)
基本的にベースはOrtizの手順だが、各パート使用されている技法が少しずつ異なる。
個人的にはOrtizの手順の方がしっくりくるが、2段目でTrevor Lewisのモンテムーブを使用した見せ方が面白い。

Simon Aronson “O’Aronson Aces”
出典:Try the Impossible (2001)
やや特殊なギャフカードを使ったクリーンなバリエーション。
映像(Sessions with Simon)で見て引っかかった。
このプロットの改案はどうしてもリーダーパケットが分厚くなったり、スイッチのためにリーダーパケットが他のパケットと接触する作品が多かったりするが、本作はギャフカードによってそのあたりがクリアされているのもナイスなポイント。
タイトルのセンスはよく分からない。

Joshua Jay “Overlap Hitchcock”
出典:Close up Close. Vol3 (2005)
こちらもAronsonギャフカードを使ったバリエーション。
方向性的にAronsonに近いが使用しているギャフが異なる。
個人的にはカードの示し方のフェアさからAronsonに軍配があがる。

松田道弘 “スローモーション・スイッチャローの改案”
出典:松田道弘のオリジナル・カードマジック (2006)
基本の流れは原案通りで、大胆なレイアウトの部分が特徴的。
「まぁ大抵の人はここでしりごみするでしょうが、もう少し付きあってください」という文が良い。私も使いたい。
シックカードを採用されてるが、この手順においては今ひとつメリットがわからない。


番外編
Joaquin Matas

個人的にお気に入りの演技。
MacDonald's Acesのコンビネーション。私が知っているこのプロットの作品で一番好み。
消失部分が綺麗で、改めのタイミングなどマニアックなポイントも押さえられていて大変良い。



おまけ
何年か前に考えたインビジブル・ジャズ・オーヘンリー・フォーエーセスというような謎手品を晒しておきます。
あたまの悪そうなタイトルだ。

最後のAがリーダーパケットに移動したことを枚数の増加によって印象付けることで、どんでん返しの効果を高められないかという試み。色々いじっていたら結果的にいろんなアセンブリーを混ぜた感じになりました。

The Expert's Portfolio No.1 - Jack Carpenter

12-11,2016

experts-portfolio.jpg

"The Expert's Portfolio No.1" Jack Carpenter - 1997

Jack Carpenterのカードマジックの作品集。
ブログで以前取り上げた、"Modus Operandi"と同じく前半カードマジック、後半ギャンブリングデモンストレーションの構成。

カードマジックのパートでは6つの手順と2の技法が収録。
手順に関しては、シカゴオープナー、3カードモンテ、Aアセンブリ等、扱うプロットに特に偏りはありません。
本書の冒頭で自身はピュアリストでギャフは使わないと書かれており、すべての手順がレギュラーデックで演じることができます。

A Potent Presage
Gemini Twinsをした時にした手順。
3つの予言が一致した後、4オブアカインドが現れるクライマックスがついた手順。
最初の予言が一致する部分が、表向きに入れたカードの隣のカードが一致するのではなく、最終的に出来上がった3つの山のボトムが一致するといった現象です。台詞もその辺りを曖昧にと書かれており、一般的なGemini Twinsに比べて現象がややぼやけた印象。
構成自体は上手く出来ていて、豪華な手順ではあります。

Simplex Backfire
バックファイアアセンブリー。それまでに発表した作品についても触れて解説。
バックファイア部分の解決法があまり好みではないのですが、全体的な流れはなかなか好きです。

技法についてはいずれもカラーチェンジです。
ひとつはJack Carpenterの代表的な技法でもあるThe Impulse Change(デックにアウトジョグで突き出されたカードが変化)、二つ目はテーブル上でカットして取り出してみせたカードが変化する(説明が難しい)The One-for-One Change。
いずれも少し変わった状態での変化で面白いです。
The One-for-One Changeはなかなか使い道が思いつかないのですが、面白い使い道がありそうなで、マニア心をくすぐられます。


The Expert's Turn to Dealと名付けられたギャンブリングデモンストレーションの章が全体的に面白かったです。
※DVD Jack Carpenter Expert Gambling Routines(未見)と収録内容はほとんど同じようです。
スタッキングのデモンストレーションが多い印象で、解決策はリフルシャッフル(+ランニングカット)でのコントロールとフォールスディールのコンビネーションが中心です。
ギャンブリングテクニックを駆使している感じが、個人的に練習していて非常に楽しかったです。

The Sweep Control
リフルシャッフル〜ランニングカットの後、デックを4分割すると各パケットのボトムが4A。
似たような手順で使われがちなスリップカットやクリンプを一切使用しておらず、マニアが見ても追いにくくて、不思議だと思います。
鮮やかな現象ですが、あまりフラリッシュっぽくなりすぎないところが非常に好みでした。

Nine Angry Men
ten-handed stackを1度のシャッフルで達成します。
それなりに難易度はあるのですが、上手く構成されているので無理のある手順ではないです。

Nova Royale
Freeman Displayから5枚目が出てきて、最終的に星型(ヒトデっぽい形)でロイヤルフラッシュが現れます。
現れます。
出現の形が今ひとつ惹かれず。


"Modus Operandi"より本作の方が好みで、実際やってみようかなと思う作品もちらほらありました。
ギャンブリングデモンストレーションに興味がある人にお勧めです。

Evolution - Bill Goodwin

12-01,2016

evolution_title.jpg

"Evolution" Bill Goodwin - 2011

Bill Goodwinのレクチャーノート。
技法を含め16作品収録されていますが、Rotatorという技法とその応用、Larry JenningsのCountback Acesのバリエーション、Duplex(エレベーターカード現象の一種)とそのバリエーションがメインを占めており、その他の作品が数作といった感じです。

Rotatorはカードの天地の向きをひっくり返したように見せて一部ひっくり返っていないというなかなか地味な技法です。
応用作品として4枚のジョーカーがひっくり返る(裏表ではなく天地が逆転)The Tumblersや、天地を使った古典的なカード当てについて説明しながらデックの天地の逆転現象などを見せるReversal Tutorialが収録されています。
またRotatorを使用したクリンプの隠蔽方法も紹介されています。

Countback Acesは観客が任意でデックをカットし、その枚数からある法則に従いカードを配り最終的に出来上がった4つの山から4Aが現れるというものです。
現象自体はちょっとした足し算が出てきたりとやや数理トリックっぽさがあるので、好みが分かれるかもしれません。
Larry Jenningsの作品をはじめ、Gordon Bean、Helder Guimaraesらのハンドリングを含む7作のバリエーションが収録されています。
配り直しのスピードアップを図る改案であったり、別の現象への応用などさまざまな角度からのアプローチが面白かったです。
個人的には巧妙なアイディアでスピードアップを図ったHelder Guimaraesのバリエーションが良かったです。この人こういった作品も作れるのだなあと感心。

Duplexは4枚のカードで行うミニマルで一風変わったなエレベーターカード現象です。
上手く構成されており、やっていてなかなか気持ちのいい作品です。
バリエーションの2作はアイディアは面白いですが、個人的にはシンプルな原案が好きです。

その他Bro.John HammanのProtean TwinsのBill Goodwin流のハンドリングや、計算機をテーマにしたPocket Calculatorなどが収録されています。

全体的に派手さはなく、やや好みの分かれそうな内容のため、万人受けする内容でないかもしれません。
個人的には1つのテーマに対する様々なアプローチや、あまり見かけない現象などが面白く、またクレジットに関してもさすがのGoowinという充実さで良い冊子でした。

Cards on the Table - Jerry Sadowitz

08-26,2016

cards_on_the_table.jpg

"Cards on the Table" Jerry Sadowitz - 1989

Jerry Sadowitzのカードマジック作品集。
クラシカルなテーマが多いのですが、見せ方がユニークであまり他では見かけないような作品が並んでいます。
本書の冒頭でも触れられていますが、Roy Waltonの影響が全体的に目立ちます。
収録作品を幾つか紹介。

Consolation
デックのボトムにある4Aとテーブル上のカードの交換現象。やや妙な位置関係の交換現象ですが、ギャンブリング風の演出が面白く、なかなか興味深い作品に仕上がっています。

Ambitious Spots
ピプスが少しづつ上がってくるアンビシャスカード。

The Card that doesn’t go to Pocket
カードトゥポケット。最後には選ばれたカード以外のデックが4つのポケットに移動。

個人的にはThe Backward Card Trickというオーソドックスなカード当てを逆の順序で行う(カードを当てるところから始める)作品が大変気に入りました。
トライアンフやトーンアンドレストア現象のバリエーションでたまに見かける時間を戻すといった現象ではなく、順序がそもそも違うシュールさが面白く、オチも綺麗にまとまっています。

現象や演出の面で面白さを感じる作品が多かったのですが、自由に好きなカードをコールさせて演じるトライアンフや、観客に途中で例の質問をしないOut of Sight Out of Mindといったマニアックな方向性の作品もあります。

その他に技法の解説の章で技法が4種解説されています。

様々なテーマを扱っており、ユニークなアプローチの作品が並んだ面白い作品集でした。
もっと多くの作品にも触れたいのですが、いろいろな事情があって手にすることができる資料は限られるようです。

4 F Ⅻ - Daryl

05-02,2016

IMG_1190.jpg

"4 F Ⅻ" Daryl - 2016

先日箱根で開催されたコンベンションでのレクチャー内容をまとめた冊子です。
コンベンション後、各地でレクチャーを開催されておりそちらの方に参加しました。
冊子の感想というよりレクチャーの感想に近いかもしれません。

演技中のストレスを出来る限りなくしたいとのことをレクチャー冒頭でおっしゃっていただけあり、収録されている作品は演者の負担が少なく、効果的な作品が並んでいます。
単純に難易度の高いスライハンドを使用しないこともありますが、技法を用いる場面では適切なミスディレションやカバーが伴うように構成されており、ほとんどの手順がエンドクリーンになるように構成されている点も特徴です。
また技法の使い方としては、現象を起こす瞬間に技法を使うのではなく、現象の時点ではすでに裏の仕事を済ませている作品が多いです。

The Effect-less Methodと名付けられたエッセイで、観客の間違った思い込みをより強固なものにさせるために技法を用いるという策略が紹介されています。レクチャーで肝になる部分のひとつであり、本書でも具体的な作品を紹介しながらわかりやすく紹介されています。秘密の動作に疑念が抱かれにくくなることやエンドクリーンに終わることができることにもつながる策略でありなるほどなと。

いくつか作品の紹介を。

Bennet’s Boner
Horace Bennettによる破いた紙玉の復活。従来の手順のようにパームやスイッチが必要ではあるのですが、巧妙なハンドリングのおかげで、非常にストレスの少ない手順だなと。

Hyper-Bent-Elation
売りネタにもなっている、ハイパーカードを使ったマジック。
現象も奇妙でいいですが、秘密の動作が演技の早い段階で終わっているのも良いです。

Audio Transposition
2つのおもちゃの音が入れ替わるマジック。
The Effect-less Methodで具体例の一つとして紹介されています。実演を見たとき完全に引っかかって現象も面白かったのですが、この冊子での解説はちょっと簡潔すぎて現象が伝わらないように思います。

これまでDarylのマジックに対して抱いていたイメージは、明快な現象をオーソドックスなハンドリングで構成されているといったものでした。
改めて作品について触れて考え方を知るとオーソドックスな手法の中にもしっかりとしたDarylのタッチを感じることができました。

Darylはレクチャーが上手いのは知っていましたが、実際大変良かったです。解説がわかりやすく、細かな考え方を知ることができたことももちろん、解説まで楽しませようとするエンターテイナーっぷりが素敵でした。
個人的にレクチャーに参加すると、解説いらないからもっといろいろ見たいって場合が結構多かったりするのですが、今回はレクチャーという形式で非常に良かったなと思いました。